葦風の記録3

わしのオヤジについて、少し話してみよう。

まあ、想像を絶するすげえ男であることは間違いない。わしよりも、人物的には数段上だろう。

土方一筋で、ずっとやってきた。しまいには、県を代表する土建屋の社長になっちまったから、腕っぷしだけでなく頭も切れたのは間違いない。

しかし、とてつもなく短気だった。小さい頃は、いつもぶん殴られたよ。今で言うと、プチ虐待かな(^^)

ただ、わしはそれが日常だったから、そんなもんかとあまり疑問はなかった。

こんな野蛮を絵に描いたような男が、なぜ囲碁を知っていたのか。

オヤジに、理由をいつか聞いたことがある。

オヤジはある時、政治家とか偉い人が集まる席に同席する機会があったらしい。その時、みなさん優雅に囲碁を囲んでいたそうだ。

そこでオヤジは思ったらしい。トレンドは囲碁だと。偉い人は、碁を嗜むのだと。

そして、必死にルールを覚えたと言っていた。

そしてできれば、息子にも覚えてほしいと思っていたらしいのだ。

そんなことを知らないわしは、ただ学習塾を逃れるためだけに、囲碁塾に入門することになる。

 

オヤジとの確執は続いた。また話す機会もあると思うが、邂逅の時を迎え、和解するのには、それから約30年の歳月が必要だったのだ。