葦風の記録68

わしの家族では、過去に大学に行った人間はいなかった。わしが小さい頃に亡くなったじいちゃんとばあちゃんは小学校卒だったし、親父どのも農林高校卒だった。大学とはどういうものか、さっぱり分からなかったのだ。

親父どのに「トンペイ大学を受けたい」と言うと、「そりゃあ、どんな学校なんだ」というから、「囲碁部が日本一つええ学校だ。日本で3番目にできた昔の帝国大学で、魯迅も学んだ凄えところだ。西澤学長は世界的にも有名だろ。小田和正も学んだんだ。」というと、「へー」と言ってた。なんだか訳がわからなかったようで、「帝国大学って何のことだ。それって凄えのか?地元のS大学のほうが利口じゃねえのか?」と聞いてきた。

わしは返事に困っていたが、ふと名案が浮かんだ。パナソニックに勤めていて、最近まで仙台勤務だったおじさん(親父どのの弟)が、たまたま帰省していたのだ。

わしと親父どのは、トンペイ大学とは、仙台とはどんなところかを知るために、おじさんの話を聞きに行くことにした。