葦風の記録82

わしは、婆さんに言った。

「わしは必ずあいつの想いに応えるよ。あいつもやりたかった事がたくさんあっただろう。さぞ無念だったろう。あいつには世話になった。今わしができることは、あいつが自慢してくれた、わしが村一番の天才だったということを証明してやる。それから墓参りに行くよ。」

そういうと、老婆は「あんた、今どこにいるんだい?」と聞いてきた。

わしは、「今は、遠い所にいるんだ。帰るのは1年くらいかかるから、それまで待っててくれ。必ず墓参りに行くから。」

そう言って受話器を置いた。

わしの中には、言葉には変えようもない熱い想いが、吹き出すように渦巻きはじめていた。