2020-09-23から1日間の記事一覧

葦風の記録83

ベッドの暗い天井を見上げて思った。 病気、入院、不合格、浪人、友の死、退院の目処立たず…いったい何でこうも立て続けに不幸が起こるのか。わしが何か悪いことでもしたのか。 身体は重く内臓は壊れ、回復している自覚もない。いっそ死んだ方が楽じゃないの…

葦風の記録82

わしは、婆さんに言った。 「わしは必ずあいつの想いに応えるよ。あいつもやりたかった事がたくさんあっただろう。さぞ無念だったろう。あいつには世話になった。今わしができることは、あいつが自慢してくれた、わしが村一番の天才だったということを証明し…

葦風の記録81

それから2週間ほど経って、わしはまた電話した。繋がった。親友のおばあさんだった。一家が全滅して、歳老いた老婆がたったひとり残ってしまったのだ。 おばあさんは、いきなり大声で泣き出した。 「あの子は、あんたのことをいつも自慢してたよ、俺の友は、…

葦風の記録80

良いことは続き、悪いことも続く。 これはこの時 学んだ真理だ。 ではこの時、いったい何が起きたのか。 卒業式の日、近所の幼なじみである わしの一番の親友が、交通事故で一家三人死んでしまったのである。 このニュースは、わしはベッドの上で何気なくテ…

葦風の記録79

オヤジも自慢の息子が落っこちて、本当は荒れていたらしい。飲み屋で暴れまくったってのは後から聞いた話だ。済まねえことをしたよなあ。 だがそれを言葉に出さずに耐えたのは流石だと思う。 わしは治療に専念していた。 早く退院して、もう一度受験に臨みた…

葦風の記録78

入院して数日後、不合格の知らせが入った。ベストは尽くしたが、やはりダメだった。 この時期は、本当に辛かったな。 何しろ、死ぬ気で受験したのに誰も認めてくれなかったんだから。 それに(証拠は無いが)わしのミスでは無く、ただ事故みたいなことに巻き…

葦風の記録77

出雲市駅に迎えに来て、ぶったまげたのはオヤジだ。わしは土色の顔をして、駅に着いたとたんに力つきて倒れてしまったのだ。 ただならぬ状況を察したオヤジは、そのまま病院へ連れて行ってくれた。 そこで診察を受けたが、医者に言われたのがこの言葉。 「あ…

葦風の記録76

受験中は、目眩がして頭がグラグラした。まともに考えれる状態ではなかったが、夢中で答案に向かった。 しかしそのうち、吐気がひどくなってトイレに何回も駆け込んだ。 こんな状態で、やっとこせ2日の受験を終えたのだが、終わった時はもはや重篤な症状に陥…