葦風の記録39

こうして、ついに高校に合格した。

しかし浮かれていられたのは、始めだけだった。

緊張してクラスに足を踏み入れると、そこには経験したこともないような世界が広がっていた。

理数科というクラスは、今までとまるで雰囲気が違っていた。

異質な空間だった。

それはなぜだったのか。

それは、クラスメイトのほとんどが、医者を目指していたのだ。つまり理数科とは名ばかりで、現実はただの医者の養成学校だったのだ。

みな、生きる目的がはっきりしていた。目指す職業もはっきりしていた。

しかしわしには、目指すものはなかった。ただ、碁が打ちたかっただけだから。

なんという悲劇であろうか、わしは、ただ先生の勧めるまま、何の目的も意思も無くこの医者養成クラスに飛びこんでしまったのだ。