2019-08-24から1日間の記事一覧

葦風の記録13

それから大騒ぎだった。 オヤジは大喜びで「オラ、寿司だ寿司買ってこい!」とわめいて、とんでもねえ高級寿司を持って来させた。しかし、わしは当時ワサビが駄目だったので、「なんだ、オメエ喰えねえのか!」と言ってオヤジがほとんど食べやがった(笑 ま…

葦風の記録12

大会が始まった。 わしは、完全にノーマークだった。 気楽に打っていると、4連勝して勝ち進んだ。 会場がざわついたのを覚えている(笑 5回戦の相手は、前年の優勝者で有名な選手だった。 この碁のシーンは、今でも鮮明に覚えている。 すごく苦しい局面だっ…

葦風の記録11

当時、少年少女囲碁選手権が新しく創設されて、囲碁界は沸いていた。 その県大会に出場するよう、先生に言われたのだ。 わしは、それまで大会というものに参加したことが無かった。 ただなんだか面白そうだったので、素直に出場することにした。 気楽なもん…

葦風の記録10

9ヶ月で1級に昇級したわしは、小学5年生になっていた。 そんなある日、先生から手紙が届いた。 「日々の練習、お疲れ様です。出雲屋くんの対局態度はいつも真剣そのもので、実に立派です。今年は、入段が期待できます。気を引き締めて、練習に励んでください…

葦風の記録9

それからは勢いがついて、毎月1級ずつ上がっていった。 自分では気がつかなかったが、異例のスピードだった。 そして数カ月後、ついに先生に初勝利を挙げた。このときには、黒石は全て生きることができ、さらには先生の石を取ることができるようになっていた…

葦風の記録8

それから1カ月がたった。 その日も、いつものように先生に指導を受けた。 先生とわしとの対局が終わった時、兄弟子たちが周りから局面を覗き込んでいた。 何かが起こった。 そして思わず、拍手が起こった。 そう、わしの黒石は全て生きていたのだ。 兄弟子の…

葦風の記録7

さて、その翌週。 道場に行ってみると、壁にわしのネームプレートが貼ってあった。 「25級 出雲屋」 とあり、いちばんビリだったが なんだか嬉しかった。 一番上を見ると、七段の人が最高位だった。わしは、「あと32級 上がればいいのか」と素朴に思った。 …

葦風の記録6

こうして、わしは地元の囲碁塾に入門することになった。 先生は、地方棋士だった。 初めての日の光景は、今でもよく覚えている。 先生が、学生を相手に三面打ちをされていた。 そして、その隣では学生たちが対局をしていた。皆、真剣だったが、どこか楽しそ…