それから1カ月がたった。
その日も、いつものように先生に指導を受けた。
先生とわしとの対局が終わった時、兄弟子たちが周りから局面を覗き込んでいた。
何かが起こった。
そして思わず、拍手が起こった。
そう、わしの黒石は全て生きていたのだ。
兄弟子のひとりは、後に語ってくれた。
「出雲に天才があらわれた」と。
先生はすっと立ち上がり、わしのネームプレートの前に立った。
マジックを持ち、無言で25級に二重線を引き10級と書かれた。
その場にいた全員の顔が引き締まったのを覚えている。
わしは、1カ月で15級 上がったのだ。