葦風の記録8

それから1カ月がたった。

その日も、いつものように先生に指導を受けた。

先生とわしとの対局が終わった時、兄弟子たちが周りから局面を覗き込んでいた。

何かが起こった。

そして思わず、拍手が起こった。

そう、わしの黒石は全て生きていたのだ。

兄弟子のひとりは、後に語ってくれた。

「出雲に天才があらわれた」と。

先生はすっと立ち上がり、わしのネームプレートの前に立った。

マジックを持ち、無言で25級に二重線を引き10級と書かれた。

その場にいた全員の顔が引き締まったのを覚えている。

わしは、1カ月で15級 上がったのだ。