葦風の記録6

こうして、わしは地元の囲碁塾に入門することになった。

先生は、地方棋士だった。

初めての日の光景は、今でもよく覚えている。

先生が、学生を相手に三面打ちをされていた。

そして、その隣では学生たちが対局をしていた。皆、真剣だったが、どこか楽しそうだった。

そうこうしていると先生が、「キミ、打ってみよう」と言われて、生まれて初めて対局することになった。

9個の石を、星に置きなさい、と言われ、たどたどしく印がある場所に置いた。

碁石の感触は心地よく、またカヤの香りもどこか風雅で、すっかりいい気分になった。

 

しかし結果は。

ルールも知らなかったから仕方ないが、セイモク置いて300目くらい負けた。要は、全部取られたのだ。

わしは、結果がどうなっているのか分からなかったが、隣にいた兄弟子たちが クスクスと笑いだしたので、わしは大敗したことを知った。

その後兄弟子のひとりから、簡単なルールを教わった。わしは真剣に聞いた。

そして理解したのは、「黒石が目を持てば、わしの石は先生に取られない」ということ。

そして、「先生に黒石を取られなければ、わしの勝ち」という訳の分からない自己ルールを確立した(^^)

すっかり嬉しくなって、わしは通うことを決めた。

オヤジも、喜んでいたよ。